住んでいる賃貸で大量の使い古された家具がエントランスに積まれていることが年に何回かある。不用品粗大ゴミは行政に日付を予約して回収してもらうため、こうして住人の不用品が回収日まで鎮座する光景がままある。
これだけでは模様替えかはわからないけれど、数日後にポストに養生テープが貼られると引っ越したのだということがわかる。
この様子に遭遇するたびに、どこかさみしいなという気持ちと、いいなうらやましいなという気持ちの両方があらわれる。
ほぼ同じ作りの部屋に住み、出かけるときは同じエントランスを通り、階や部屋番は違えどほぼ同じ景色を見て過ごしていたはずで、建物を中心とした共通事項があったはず。直接コミュニケーションを取ったことはないからわからないけど、きっと街に対して似た感覚を持っていたのではないかと想像できる。
同士というには少し違うかもしれないけど、そういった人がここを離れて次の生活へ移ったという事実が、ただ面倒なので住み続けているだけの自分にはなんだかきらびやかに見える。もちろん人の背景は様々だから必ずしも好転的な理由とは限らないだろうけど、この場所に区切りをつけることができたという事実に羨望の眼差しを向けざるを得ない。
自分は今年もこの場所で春を迎え、今は梅雨を待っている。