ヒトナツログ

健康でハッピーになりたい

生存状況 powered by Pixela

良いタダ飯と悪いタダ飯

ある日のランチ。

チキンカツ定食の大盛りを頼んで、1枚食べたあとに2枚目に手を付けようとしたら断面見てすぐわかるレベルで明らかに火が通っていなくて生の状態だった。

鶏肉の生はカンピロバクターが本当に怖い。過去にカンピロバクターで死にかけた経験があって、トラウマから一時期は鶏肉自体食べられない時期があったくらいに怪しい状態の鶏肉は怖い。

店員さんに渋々伝えると作り直しになるということでこちらの要望を聞かずに颯爽とお盆ごと引き上げられていってしまった。中途半端に満たされつつある満腹中枢の状態で数十分待っていたら新しいのがサーブされた。

大盛りは並の2倍の構成で、引き上げられていった段階で半分食べていた。つまり並一食分は食べていたのと同義。そして大盛りが再びサーブされたので実質並の3倍をいただくことになった。別にカツ以外は引き上げる前の状態のものでよかったのに……フードロス……などと思ったものの時既に遅し。目の前には作りたてのチキンカツ定食大盛り。少なくしてくださいと言えばさらにフードロスされることを察して言えなかった。

お腹がすごく空いていたから大盛りにしていたものの、カツ。この量はきつい。しかも一時停止した中途半端に満たされつつある満腹中枢を経ている。でも食事は極力残さない主義で、妥協案として衣だけは少し剥がさせてもらった。

「こちらのミスなのでお代は頂きません」とチーフの名札を付けた店員さんが言う。いやでも普通に作り直してもらったしめっちゃ食べてるし……と思いつつも、こういった提案がなされる場合マニュアルでこのように対応することが決まっており、大人の事情なのだ。客が引き下がっても会社のルールの上で働く店員さんとしては逆に困るものなのだ。これが現代社会。なので遠慮せず受け入れた。


帰り道はお腹は満たされすぎなものの、気分はどうも満たされなかった。生の状態で出てきたことに気分を損ねているのではなく、それ自体は別に人間にはミスがつきものなのでなんとも思っていない。

客観的に見るとどう見ても「途中まで食べて作り直させお金を払わずにタダ飯を食べて帰ったやつ」であるという事実にモヤモヤしていた。別にそんなことをしたくて店に行ったわけではないし作り直してもらったわけではないから。生の状態だったカツや途中まで食べていたご飯が廃棄されたであろうこと。普段なにもなかったらレジで払っている代金や適正価格とは一体なんなのか。オペレーションミスによる損失と資本主義とは……。などが加わりぐるぐる考えてしまった。

自分の感覚も狂っているのかもしれないし、現代が狂っているのかもしれない。なにかが狂っている気がする。

うまく言葉にできない渦巻いた気持ち悪さのせいか、あるいはただ単に食べ過ぎたチキンカツのせいか、その日は夜になってもお腹が空くことはなく、なにも食べなかった。