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運がよくてうまくいった靴好きの変なおじさんの日記––SHOE DOG シュードッグ 読んだ

SHOE DOG(シュードッグ)

SHOE DOG(シュードッグ)

結構前にシュードッグという本を読んだ。

ベストセラーらしくて、本屋とかでもよく見かける。ピークは過ぎたので今はそこまででもないかもしれない。

ナイキの創業者の自伝で、ナイキの前身の会社(ブルーリボン社)を起こす手前からはじまり、会社が成長して上場するあたりまでが書かれている。

いまのナイキに至るまでには日本企業が大きく関わっている……なんていうか日本はそういう海外x日本の話が大好きでマーケティングもしやすい。だからベストセラーになっているとも言えなくはない。

僕はスポーツに疎いから書中に出てくるスポーツ選手のことは一切わからなかったし、著者のフィル・ナイト氏がどういう顔をした人なのかも一切知らないまま読み終えてしまった。あと靴メーカーのこだわりもないからナイキに対してもなんの思い入れもなくて、めっちゃドライに読めてよかった。


自伝だから著者主観の回想をベースに書かれていて、各年代順に日記スタイルで書かれておりなんとなく親しみやすく読めた。

内容は読者が情景を思い起こせるレベルに物事が詳細に綴られていて異常に臨場感がある。あまり覚えていないことに関しては文章で「あまり記憶が定かでない」などと書かれているから、そう書かれていない部分の出来事に関しては記憶に自信ありげなのかなと思った。

ただ人間の記憶ほど曖昧なものはないから、記憶違いや創作の部分は絶対あるでしょこれと思った。だからすべてが正しい事実だけでは決してないんだろうなと思いながら読んでしまった。


内容に関しての感想としてはタイトルにもつけたけど『運がよくてうまくいった靴好きの変なおじさんのおもしろい日記だこれ』というところに落ち着く。

なんでかというと別にああしろこうしろというような説教とかはなく、淡々と時系列でこういうことがあってひどい目にあった、いいことがあった、お金がなくなりそうになった、といった話が綴られているだけだからで、振り返ってみればあのときは必死だったからなんとも思わなかったけど…みたいな内容である。そんなおじさんの過去を振り返った人生日記から何を感じ取るかは読者次第としか言えない。

それで、そんなおじさんの日記は面白くて、なんでかというと普通のおじさんではなくナイキを作ったおじさんの人生日記だからで、平凡じゃない山あり谷ありな出来事が綴られているから面白い。

フィル・ナイト氏はかなり変人で、自分でも書中で変人だと書いているので自覚はあるらしい。彼の人生はなんていうか選択場面で常人がAと選択するところでBを選択していく……実際Bで正解だった……みたいなことをやり続けているような人生だと思う。普通そんな行動や選択はしないよ…というほうを選択しても、なんとかなってしまう。周囲からは変人と思われて当然だけど、それでなんとかなってしまうのだから運がいいとしか言えない人だなと思った。

日記の内容をネタバレせずに総括して雑にいうと『なんかナイキっていう靴のメーカーに能力が高い靴好きの変人が同一時期に集まって、勢いでやってたら倒産の危機に当然陥ったけど、でも経営者の運が異常によくて運良くなんとかなりすぎて今に至った』という内容になる。変な話である。

のちに正社員第1号となるジョンソンという男とのやりとりが印象的で、まだ非正規雇用で遠方で勤務しているジョンソンとは手紙で業務のやりとりをするのだけど、彼からの手紙の〆には毎回「励ましの言葉がほしい」と書かれている。なのにフィル・ナイト氏は毎回返事すら書かずシカトし続けるという行動をとる。ジョンソンは尋常ではない量の手紙を毎日送ってくるからうんざりしていたというのは読んでいても伝わってきたけれど、それにしても「うんざりする量の手紙を送るのはやめてくれ」と言えたはずだと思う。その感情を手紙にも書かずただ返信せずほったらかしにしておく神経はすごいというかなんというか。ジョンソンもジョンソンでよくずっとそんな状態なのにナイキに貢献し続けたなと思う。ふつうなら誠意込めて業務レポート出してるのにシカトされ続けたらこんなのやってられるかってなる気がする。ジョンソンも変な男なのだった。

ほかにも純資産が少ないまま自転車操業続けてたら銀行に見放されたり、FBIにマークされてピンチになったり、借りた金を別用途に使ってるのがバレたりと、大小様々な問題が起こってとにかく読んでてヒヤヒヤした。

並大抵の人間ならどこかのタイミングでダメになって倒産するしかなくなるようなエピソードがたくさん綴られていたけど、フィル・ナイト氏はどの場面でも破滅することなく救済の道を運良くいけて、結果なんとかなってしまう。そうしたなんとかなったの繰り返しで今日のナイキになっていく様子が描かれている。


一冊を通して目を見張るものがあって、フィル・ナイト氏の行動指針は終始一貫していた。非常にビジョナリーというか迷いがない。すべて最初から貫いた指針を彼は持っていて、運要素を除いてはそれを貫き通してきたら結果的にうまく行ったというような印象を内容全体から感じた。悪く言えば頑固ともいうのだろうけど、常に彼は自分の信念と指針を信じて、ただただ走り続けてきたようだった。

信念と指針を貫き通す精神を持ったほうがいいなというのは、この本を読んで感じた事柄のひとつでもある。


いろいろ書いたけど、靴好きの変なおじさんの人生は色々ありすぎて内容が濃く当たり前に退屈しない日記という感じで総じて面白いので、日記好きの人は読んでみるといいと思う。

SHOE DOG(シュードッグ)

SHOE DOG(シュードッグ)