創作作品で出てくるような、ほどよく豊かな田舎は現代ではもう存在しないと思っている。
平屋の木造家屋が建っていて、田んぼがあって、軽トラックや原付が生活にありつつ、町にイオンモールが出てこないものの、個人の商店が商店と成り立つくらいには人口はいて、夏祭りには浴衣でにぎわうみたいな田舎。
昔はあったのかというと、あった。
概念として存在しているし。限界になりつつある町に行くと、概念の片鱗がわずかに残っていたりする。
都会に暮らす便利さを享受しつつ「豊かさとは」に思いを馳せると、現代においてはたしてなにが僕たちの心を満たしてくれるのだろうかと不安になり宛のない虚しさのようなものに苛まれる。
便利なことと豊かであること、どちらか一方では満たされないものの、どちらも両立しようとすると限りなく難しい。
ほどよく豊かな田舎の蜃気楼を追い続けている。