ヒトナツログ

まだ京都にいる。

スーパーで邂逅す

スーパーでレジを終えて袋に商品を入れようとしたところで声をかけられた。

大学のときの同回生の女の子だった。びっくりした。

彼女とは在学時代なんども同じ講義を受けていたし、ワークショップで同じチームに幾度となったことがある。会えばいつも声をかけるし、学食で会えば別々に食べる理由もないので一緒に飯を食べていたりもしていた。

でも大学の知り合いというものは大抵の場合めちゃくちゃ仲良くなるでもない限り、それ以上でもそれ以下にもならない付き合いになっていくパターンが多い(と思う)。4回生の終わりの頃にはキャンパスに通うことも皆少なくなり、会う回数もだんだんと減り、自然とフェードアウトしていく。なんとなく卒業後に連絡を取ることもなく、近況を知る手段としては知人伝いにうわさ話を聞くかSNSで知るくらいといったものになる。SNSとて今日日は学生を終えるとコンプライアンスだとか監視社会だとかで鍵をかけたり窮屈になって一部の層を除いてみんな次第にフェードアウトしていく流れが多い。

それで、僕と彼女もまた例に漏れずこのパターンだった。

最近どうですか、それは大変でしたね、京都残ってたんですね、大学出てからそんな風に過ごしてたんですか、あの頃と変わってないですね、変わった部分もありますね、などなど。
買い物かごから袋へ買ったものを入れたり帰路を歩いたりしながらそんな風なことを話した。

そんな中、少し心に引っかかることがあった。

彼女の口から今の悩みめいたようなものがこぼれたのだけど、僕はうまく回答できなかったのだ。彼女のプライバシーがあるので具体的には書かないけれど、わりと重い悩みだったのではないかと今思うと感じる。僕の拡大解釈かもしれないけどなんとなくそう感じる。

彼女はいつも飄々としていて、謎が多くつかみどころが難しいというような、どこか不思議な感じがあるような。良くも悪くも壁があるというか、あまり自分をさらけ出さないタイプの人間で、そんな彼女の口からそういう内実めいた話題が出されたのはかなり意外だった。そういう面があってわりと重い悩みだったのではという気がしている。

正直なところ彼女のことを知らない部分が多すぎたのだと思う。彼女とは前述したような間柄だったしドライな関係といえば体裁はなりたつけど、ようするに踏み込んだ会話をしたことがほとんどなかったのだ。彼女のいろんな背景がわからないのでうまいことばの選び方だとか、ベストなことばやニュアンス、価値観に反発しなさそうな意見など、どれもがわからなくて次に返すことばが見当たらなかった。

結局のところ、どれだけ考えても過去の瞬間のことであり想像の域を出ないので、めちゃくちゃ悩んでたのか、彼女が真剣にアドバイスを求めていたのかはわからない。もし彼女の背景を知っていたとしたらよいアドバイスを返せたのかというとそれもまた微妙でもある。
ただなんとなくあのときことばをうまく返せなかったのがどうにも心に引っかかっている。


ちなみにそのときはすぐ別の話題に切り替わって、なんやかんや話して、じゃあウチこっちなんで、案外近所ですね、じゃあまた行動圏内的にスーパーで会うかもね、といった雰囲気でシュッとさようならした。

スーパーで邂逅したところで別に距離が急に縮まったりはしないけど、日常のシーンには様々な機微がある。